ガレリアの地下迷宮と魔女の旅団 感想

 

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 終わったので感想を書く。

 色々言いたいことはあるけれど、十分に満足できたと最初に告げておく。

 ちなみにsteamセール中ではルフランやその他のゲーム込みで10,000円である。ガレリア・ルフラン・剣の街の異邦人はかなり面白くそれぞれ単体で6,000円ぐらいのゲームのため、これがセットでこの価格はめちゃお得。オススメである。

 

 ちなみにゲームシステムについても触れるが、特に紹介はしない。前作ルフランとゲームシステムはほぼ一緒。

 一応言っておくとルフラン未プレイでも99%ぐらいは楽しめるが、ガレリアよりはルフランを先にプレイすることをオススメする。単体の面白さでも個人的にはルフラン > ガレリアだったし、ルフランで満足し切った後にガレリアを楽しむのがやっぱり最高のゲーム体験のように思う。

 

 それではやっていこう。

 

 

 

・良かったところ

 キャラクターと絵、これに尽きる。

 素晴らしい。前作ルフランに負けずとも劣らない素晴らしいキャラデザだった。特にユリィカとナチルという二人のメインキャラクターはかなり純度の高い良さを提供してくれる。

 

 魔女シリーズはストーリーにおいて結構なリョナとエロとグロが出てくる。それを全年齢版でやるのが魔女シリーズのお家芸と言っても過言ではない。

 そんな感じなので、絵が可愛くないとまぁ耐えられない。キャラクターが可愛いからこそリョナエログロが映え、可愛い絵柄で行われるリョナエログロだからこそ可哀そうなのだ。メイドインアビスしかりひぐらしのなく頃にしかりおやすみプンプンしかり。可愛い絵柄から繰り出されるリョナとエロとグロには、そこからしか得られない栄養素があるのである。 

 また、今作では魔女が沢山出てきてくれ、しかもどの魔女も良いキャラクターをしている。これはルフランにはなかった要素であり、単純に「他の魔女はどんな魔法使うんだろう」「魔女って他にどんな人がいるんだろう」といった興味を満たしてくれたと言っても良い。これは個人的に嬉しかった点でもある。

 

 また、シナリオの構成も良かった。

 今作は二部構成であり、ユリィカを主人公とした一部、ナチルを主人公とした二部が存在する。これは本当に良い演出であり、特にナチルへと視点が移った二部序盤は相当ワクワクさせられた。

 世界観が一新され、ナチルがいた世界がとても魅力的であり、新キャラクターも皆可愛いし面白い。これからどうなるんだろうという物語序盤からしか得られないワクワクがもう一度提供され、しかも先の顛末を知っているが故にどう繋がるのかが楽しみで仕方ない。また、ゲームシステムも今までのような固定ダンジョン攻略からランダムダンジョン攻略となり、少しの楽しみを得ることが出来た。

 冗長なリフレインは胃もたれの原因だとは思うが、ガレリアは全くくどさがなかった。ナチルの二部は本当に面白かったと言える。

 

 魔女シリーズは過去と未来と並行世界、これらが密接に絡み合う土壌が存在する。

 今作は過去も未来も取り扱っているように見えて、実は並行世界のみだ。プレイヤーの視点が時系列順ではないというだけで物語は一本筋。設定を上手く使いつつ面白い物語の魅せ方をしようという意気が感じられたし、実際面白い設定だと思った。

 このあたりは手放しで絶賛して良いと思う。

 

 

 

・不満点

 ここが本題である。

 前作ルフランではそのストーリーの重厚さと圧倒的面白さにぶん殴られ、僕は大絶賛するばかりだった。

 ただ、今作ガレリアには少し物申したいのだ。いや総評すれば素晴らしいゲームだったし、良いストーリーだった。でも良作である。ルフランのような神作ではないのだ。

 

 まず一つ、ゲームシステム。

 不満だった要素は主に二つ。トレジャーと銀の匙だ。主に前者である。

 

 トレジャーが酷い。今作は市民からの依頼をある程度達成しなければ先へと進めないようになっているのだが、依頼達成に必要なトレジャーアイテムが全く落ちないのだ。全くだ。

 これは比喩でも何でもない。全実績解除trueエンドまでにかかったゲームプレイ時間50時間の内、15時間は確実にトレジャーのために費やしている。依頼一個達成するためのアイテム1個を出すのに運が悪いと1時間かけるなんてこともザラ。一生PCの前でゲームコントローラーを握りダンジョンに入って歩いて出て入って歩いて出てを繰り返すだけの数時間。想像できるか? 苦行でしかないぞ? とあるダンジョンの1階層からしか出てこないトレジャーがなぜか20種類近くも存在し、しかも依頼で求められるのは中々出ないものばかりと来た。アホか。

 こういった「先へ進むための作業プレイ」としてレベル上げや装備集め、ステータス吟味や厳選等があるのはゲームの一つの醍醐味と呼べるかもしれないが、しかしトレジャーマラソンは中でも苦行でしかない。しかも強制されるのがこれまたキツイ。まぁ強制でないもの依頼も僕はやってしまったのだが、それでも強制部分だけで相当きつかった。

 せめて交換システムぐらい導入してほしい。他のトレジャー10個と求めるトレジャー1個の交換とかさ。もしくはトレジャーのレアリティを上げるためのスキルとかさ。もう少しそのやり込み要素を別の所に移してほしかったなぁと思う。

 

 次に銀の匙

 このゲーム、終盤はほぼ敵と出会いたくなくなる。理由は単純で、最終ダンジョンが3600階層のランダム生成ダンジョンだから。

 もちろん100階層ぐらいスキップする昇降機なるものが時々出現するため見た目よりかなり楽なのだが、しかし道中で敵とエンカウントしたくなさすぎる。先のトレジャー集めやストーリー攻略の上で、レベル上げは既に整いきっているのだ。なんで経験値もドロップも欲しくない時に、ワンターンキルできる雑魚と何百戦もしなきゃいけないんだって話。

 そこで銀の匙と呼ばれる「敵とのエンカウントを無くす」アイテム、ポケモンで言うところの虫よけスプレーを乱用しながら3600階層を駆け下りていきたいのだが、この銀の匙というアイテムなんと店売りしていないのである。ふざけろ。

 比較的高確率で宝箱からドロップしてくれるのだが、需要に供給が圧倒的に追いついていない。必然的に雑魚と戦闘する必要性が生じ、ダンジョン攻略が遅れテンポが遅れ、ストーリーの先が気になるのに煩わしい作業をこなさなければならなくなる。

 これも一つの楽しみなのかもしれないが、にしても3600はやりすぎである。真エンドに辿り着くにはそれ相応の労力を賭せとのことらしいが、それはトレジャーという苦行やレベル上げという苦行で既に果たしている。これくらいならボスラッシュでも作ってくれた方がまだ面白かったように感じる。

 

 この二つがゲームシステムに関する文句。

 他にも無駄に多いくせに一切使わない100近い戦闘アイテムであったり、そのせいで目的のアイテムまで毎度毎度スクロールしなければならない面倒さであったり、キャラクター生成が一生初期スキルや初期固有スキルに引っ張られ続ける前作から続投の不親切育成システムであったり、やたら使い辛く見辛いスキル設定であったり、威力の分かり辛いドナムスキルや無駄の多い結魂書システムであったり、時々クラッシュして平気で2時間分のゲーム時間を奪い去っていく不安定さであったり、キャラクターのセリフ時に立ち絵の口を動かすのをサボっていたり等々細かい不満は数あれど、この二つの要素が本当に、本当に多くの時間を無為に奪い去っていった。

 

 取り合えず次作があるならトレジャーだけは何とかしてくれ。

 こんなものよりもっと面白いやり込み要素が幾らでもあるだろ。

 

 

 

・好きだったキャラクターやシナリオについて

 とはいえ、総評してよかったのは事実である。

 中でもキャラクターの良さについて、少し語っていく。

 

 

・ユリィカ

 今作のメインヒロイン。

 善性の人間。他人に優しく、笑顔が可愛くて、よく笑い、そして頭が弱い。

 

 「わたしバカだから、よく分かんないや……えへへ……」というのがユリィカというキャラクターを一言で表すに相応しいセリフであり、同時に彼女のどうしようもなさと愛らしさを表現している。

 

 まず最初に言っておくと、魔女シリーズは割と世界観が酷い。

 男が上。貴族が上。自分勝手な奴が上。女性は大体暴言吐かれるし、暴力に晒されるし、犯されるし、殺される。そんなのが至極当たり前な世界観なのがルフラン・ガレリアに共通する世界観である。今作はルフランより若干マイルドに描写されているが、しかし重いことに変わりはない。

 

 中でもユリィカは弱者の典型だ。

 彼女は頭が弱い。賢くないから出来ないことが沢山ある。だから人の顔色を窺って生きているし、他人の求めを断らない性格だから簡単に体を許してセックスに及び、盗まれても奪われても文句を言わず、挙句にお願いされれば犯罪者にも手を貸してしまう。救いようのない弱者である。

 幼少期の体験こそが人格を形成する、というのはその通りだ。彼女は音楽の才能がなかったが故に作曲家である父に厳しく当たられ続け、笑顔が可愛いと母に言われていたからそれでも笑った。笑って、相手の言うことを聞き、謝り、何かを差し出せばやり過ごせると彼女は学んでしまっており、それが彼女を弱者たらしめていた。

 彼女はどんな人間にも良いところはあるはずだと、普段は優しいけどピアノになると厳しい父を見て学んでいた。だからどんなに辛くあたられても笑って楽観的なことを言っていたし、故郷や村の男に体を求められれば断らなかった。誰かが自分に暴言を吐くのは、自分がすっとろくて鈍くさいから仕方ない。自分が悪いんだ。皆を悪くさせているのは自分だ。でも大丈夫、頑張っていればきっと良いことはあるはずだ、なんて。そんな感じの思考回路をしている。

 

 彼女は憐れで、同時に愛おしい。

 善性の極致だ。前作ルフランではルカというキャラクターがそこを補っていたが、ルカは子供であり同時にドロニアを母として愛していたが故の優しさだ。実際マズルカになった彼女は言いたいことを言える性格へと成長していたし。

 けれどユリィカは違う。彼女は一生変わらない。今後も誰かの餌にされ続け、それでも笑いながら他人に対する優しさを失わないキャラクターである。

 そんな彼女だからこそ、感情移入してしまう。憐れなのだ。庇護欲が湧く。こんなにも良い子がこんなに不幸でいいはずがない。彼女がえへへと言う姿は本当に可愛いの一言に尽きるし、どこか遣る瀬無い気持ちを感じざるを得ないのである。

 「可哀そうは抜けないけど可愛い」。魔女シリーズにおける不憫の代表と言っていいほど、ユリィカと言うキャラクターは完成されている。

 

 彼女は作中で「願いを叶え続けることだけで他人と関係を築いてきた」と言っている。

 求めに応えることが、彼女にとってのコミュニケーションだった。

 だからこそ、彼女は自分に対して何も要求してこないナチルを最初は苦手に感じ、けれど彼女だけが他の者とは違う扱いをしてくれた最初の人だったと語っている。

 

 誰かにとっての都合の良い人形でしかなかったユリィカを、初めて人として扱ってくれた。

 自分で考えて自分の言葉で喋れと、まるで自分のことのように怒ってくれた。

 だからこそ、ユリィカはナチルというキャラクターを好きになり、友達になったのだと思う。

 

 

 

・ナチル

 今作第二のメインヒロインであり、同時に主人公である。

 彼女は母を愛していたが、しかし周囲によって愛を拗らせ、腐ってしまったただの少女だった。

 

 彼女には母親だけがおり、その母親は自他ともに認めるほどのブサイクだった。

 ナチルは健やかに元気に育っていたが、しかし幼少期の子供というのは残酷だ。学校の子供達は皆、ナチルの母親がブスなのをからかった。「コイツの母ちゃんすっげーブスなんだぜ!」「お前も将来はああなるんだ!」それを四六時中言われ続けた彼女は、当然の如く歪んでしまい、やがて学校に行かずに引きこもるようになった。

 

 彼女の人格形成の元は容姿による差別だ。

 母親が醜いというだけで嘲られ、そしてそれで揺らいでしまった自身の愛情をコンプレックスに持っている。

 からかわれることが、他人からの好奇の視線が嫌になったのだ。そこで「母親なんて関係ない」「容姿なんてどうだっていい」と言い切れるならばよかったのだが、彼女は子供だった。同時に母親もまた容姿のせいで苦労してきた人間であり、言葉で諭せるほど強者でもなかった。

 だからナチルは母の容姿でからかわれ続けることに嫌気がさし、同時に自分の母親がブスだからこんなにからかわれるのだと思ってしまい、母にも辛く当たってしまうようになる。憎しみにも似た感情だ。お前の容姿がまともであったなら、私は普通に生きていけたのに。お前がおどおどせずに胸を張って生きているなら、私だってそれを見倣えたのに。そんなことを考えるようになり、そして同時にそんなことを考えてしまう自分が嫌で、鬱屈とした日々を送るようになっていた。

 

 ただ、彼女は魔女の才能に恵まれていた。

 元々地頭が良かったのもあり、引きこもり自堕落ニートだった彼女は魔法の力でお金を稼ぎ始め、やがて魔女省へと入ることになる。

 

 そして魔女省からの任務(厳密には色々違うが)で、彼女はユリィカのいる世界へと飛ぶことになる。

 

 

 

・ナチルとユリィカ

 ナチルとユリィカは対比の関係であり、同時に似たもの同士だ。

 

 ナチルには才能があった。しかし環境のせいで人格が歪み、人が嫌いで太陽の下が嫌いで、ちょっと根暗で陰湿な子になった。

 ユリィカには才能がなかった。けれどどんな環境でどんなひどい目に遭っても彼女は健気に笑い続け、明るく元気で人に優しい子になった。

 彼女達は持つ者と持たざる者、陰と陽という対比を持ち、そして互いに誰かに嫌われる鬱屈とした幼少期を過ごしている。

 生きた時代も世界観も違うけれど、それでも二人は通いあうものを持っていた。

 

 ナチルから見たユリィカは、所詮は他の世界の住人であり、どんくさくて要領が悪く、可哀そうな目に遭い続けるだけの不器用な人間に見えただろう。

 けれどそんな彼女は、母親に似ていたのだ。

 容姿が悪く、そのせいでずっと疎まれ続け、それでもナチルを育てることに文句など言わず毎日一生懸命働き続ける母。

 自分には理解が出来ない生き方だ。なぜそんなにも他人に優しくいられる。なぜそんなにも他人を憎まずにいられる。疑問に思いながら、それでも母の愛に甘える形でナチルは引きこもりながら生活をしていた。

 ユリィカと母とは容姿は全く逆だが、しかしその生き方、貧しく苦しく不幸としか思えないのに、懸命に生き優しい性格に育った彼女達に、共通項を見出す。

 

 ナチルがユリィカに強く当たっていたのはそういうところだ。

 嫌なら嫌と言えよ。殴られたら殴り返せよ。

 ずっと母に言いたくて、でも言えなかったそれらの言葉を、彼女はユリィカに対して発するようになる。頭が弱い彼女達に対して、ナチルはずっとずっと、強くなってくれと言いたかったのだ

 自分と関わりがないと思っていた別世界のユリィカという少女を、ナチルは放っておけなくなっていた。

 

 彼女達が別れることになったシーンは、とても特徴的だろう。

 

 ユリィカのせいで、ユリィカのいた世界は滅茶苦茶になってしまった。

 彼女は真実しか話せなくなるガラヤのネジを他人に貸し出し、挙句にスキャンダルを探していた革命家をこっそり匿った。そのせいで王都で革命が起こり、沢山の人が死んだ。

 彼女は村の街道で吊るされていた罪人の助けを求める声を鵜呑みにし、そのせいで罪人は拘束を抜け村で残虐の限りを尽くした。

 

 ナチルは言う。どうしてお前はそうなんだ。

 ちょっと考えれば分かることだろ。あの記者が善良なわけがないだろ。村で吊るされていた罪人が善良なわけがないだろ。お前のせいで沢山の人が死んでしまってるんだぞ。

 もっと自分で考えて、自分の言葉でしゃべりなよ。

 バカなんだから余計なことはしないでよ。

 頼むから、もっと"マトモ"であってよ。

 

 ガラヤのネジのこともあったが、それでも彼女は心の底から、ユリィカを責めていた。

 それはナチルが母に抱く気持ちに近い。あんたがまともだったら。あんたがバカじゃなかったら。あんたがほんの少しだっていいから強い人間だったら、どれほど世界はいい方向に行っていたのか。

 

 そのどうしようもなさこそがユリィカというキャラクターの欠点であり魅力で、そのどうしようもなさに涙を流して声を荒げられるのがナチルというキャラクターの欠点であり魅力なんだと思う。

 彼女達はどうしようもないほど無力な子供で、だけどそれでも互いのことだけは思っていた。

 

 

 

・良点と悪点

 長々と書く気はないので、要点をまとめていく。

 まずストーリーでの悪点から。

 

 ガレリアは全体的に文が少ない。説明が足りていない。あまりにも。

 行間を読めってレベルでは効かないほどに文が足りていない。テキストの量を1.3~1.5倍にすれば絶対神作にまで昇華できた。そんな気がする。

 

 ガレリアはルフランと違って、ダンジョンに物語が存在しない。

 そしてルフランでは鍵を守るために存在していた各ダンジョンのボスがいたが、ガレリアではボスが全くいない。

 だからダンジョン攻略の厚みが足りない。

 

 また、ルフランではサブキャラクター達は深掘りがされ、メインキャラクターであるドロシー・イサラ・マズルカ・バーバヤーガについてはその過去をしっかり描き切った。

 対してガレリアはサブキャラクターは全員浅くしか掘られず、悪役がかなり中途半端。ツェツィは深掘りされてもあまり面白いとは言えないキャラクターであり、ゴズはかなり良い悪役だったが小物感が強すぎた。

 ストーリーの厚みが足りない。

 

 もっと丁寧にアルムーンでのナチルの周り、特にソサエティでの人間関係等を描写して良いと思った。アルステラにおける王妃や村人達ももう少し深掘りしたりとか。実は〇〇でした、じゃなくて関係性を強固にするべくもっと複数キャラの絡んだストーリーを描いてほしかった。コォラルサリィの描写とか入れるべきだし、スカーレットは立ち絵ぐらい用意してあげても良くない? 絶対そっちのが面白いよ。

 それこそ伯爵の登場の出番減らしてさ。彼はどうせ人形だったし、何も面白味の無いマクガフィンだったんだから。

 

 ガレリアはルフランに比べて、ダンジョン攻略とストーリー両面における密度の薄さと、悪役の不在という収まりの悪い話の流れ、そして新しい世界を作るにあたっての説明不足と、終盤の展開の説得力の無さ(マダムになったナチルが何も知らないナチルに託す展開あたりから話が薄くなった)が響いた。

 

 ルフランでは「オオガラスを倒したら問題解決」「マズルカが時間を遡り手を貸す」「ドロニアは助けられないけれど、ドロニアとイサラとルカは確かに幸せになれた」という話の流れだった。

 今作は「ツェツィも不可も倒したところで別に何もない」「というかアルムーンもアルステラも滅亡し、ナチルが何故か犠牲になって、夢みたいな世界でユリィカだけが生きる」「ユリィカがナチルを助け、夢の世界を潰し、双子世界をくっつけた新しい世界をどうやってか知らないけど作る」「ナチルは元々別世界の住人だから新しい世界には入れず、そして世界を作った重労働の反動で疲れて眠る」「ユリィカはナチルを探しに行く」といった形で、過程はすっぱ抜かれるわ収まりが悪いわで何とも不完全燃焼感があった。

 ユリィカとナチルが互いを思い合い、互いを助け合い、そして二人で一緒に世界についてあーだこーだ話し合う、という展望だけはあったけど、それを活かしきるための説得力と説明を放棄していたのが個人的にはかなり減点だった。

 

 ただまぁこれに関しては、ルフランが神作すぎる。

 これは比較の話。多分ガレリアを一作目として出されていたら普通に絶賛していたので、そう考えるとかなりの良作だとは思う。

 それにガレリアだけに気に入った要素だってある。

 

 ユリィカとナチル、この二人の関係性や、アルムーンとアルステラという二つの世界でのシナリオはとても良かった。

 何度か書いているがユリィカの「どうしようもない頭の弱さ」に対する愛しさと、ナチルの「どうしようもなさに対する涙と悲鳴」に対する共感。この二つこそが彼女達が魅力の理由であり、彼女達の良さだと思う。

 いうなればユリィカはお荷物ヒロインで、ナチルは劣等生ヒーローだ。弱者である二人に身に余るイベントが降りかかってくるけれど、頑張って何とかしていこうって感じの力強さを、僕はストーリーから感じていた。

 

 このヒロインとヒーローの役割は物語で何度か入れ替わるし、そもそも彼女達は二人共が少女で、そこに友達以上の関係性はない。

 だけど彼女達の仲の良さはルフランにおけるドロニアとイサラを超えるほどだと思う。

 情愛がないが故に、親愛が引き立つ。出来ることならばどこかの世界で女子高生として生まれ直し、二人でくだらなくも美しい青春の日々を歩んでほしいと思えるぐらいに、彼女達二人は美しい。

 

 また、世界作りと魅せ方も良い。

 中世ヨーロッパなアルステラ、1900年代と魔法を組み合わせたオシャレな雰囲気のアルムーン。貴族と平民の存在する古い価値観を持つ世界と、魔女という異分子を現代に調和させた新しい価値観の世界。第一部と第二部という構成に加え、ナチルとマダム・マルタを繋げるストーリー運び。これらは本当に面白かったし、大満足した。

 

 楽しかった。ここ数日は本当に、寝る間も惜しんで遊んでたよ。

 苦行があったから没頭出来たとは言い難いものの、間違いなく良作だった。

 ぜひ三作目を。ルフラン、ガレリアと来た次の世界の物語も楽しみにしているので、どうか作ってください。