多分世界で一番惜しい漫画
何かが違えば歴史に名前が載っていた
好き嫌いが相当分かれる。全27巻
あらすじ
舞台は現代日本
人間は死ぬと魂となる。魂の内、善なる者は霊体となり、悪しき者はアヤカシとなる
アヤカシは善良な霊体を襲ったり、生きている人間にも干渉し被害を出す
そんなアヤカシを、八百万の神達が退治したりして廻っている世界
そんな中、誰からも記憶されない野良の神様「夜卜」と、ひょんなことから生身のままに霊体になる術を身に着けた女子高生「ひより」、そして悲しい過去を抱えて死んでしまった霊体の「雪音」が支え合いながら、神やアヤカシに携わる問題を解決していく話
勿体ない点
ストーリーと設定がふわふわ。これに尽きる
この作品、月刊連載である。つまり週刊連載に比べるとちょっと余裕がある
が、ストーリーと設定とキャラクターがマジでえぐい。アッパラパーすぎる。話がいつまで経っても同じところをぐるぐるぐるぐるするし、展開はつまらん方向に肩切って走っていくし、設定いつも後出しで都合が良いように組み替えてくるし、キャラクターは言ってることが二転三転するし、展開の動かし方がいつもエモーショナル。道理が通ってない。展開の説明をしない。原理をかみ砕いてない。説得力を積むことを放棄している
画力と、空気感は相当良い。ギャグセンスも個人的には気に入っている。キャラデザも嫌いではない
だが、少年漫画として見るなら相当ヤバい。異能バトルの大前提である能力や強弱の設定がゆるっゆるのガバッガバだからバトル物ではないし、キャラクター数が多いように見えて実は少ないというキャラデザを途中で放棄した仕上がりとなっているためキャラ物としての質も低く、感情変遷や物語展開に筋道が一切立っておらず説明がつかないためシナリオ物として見ることも出来ないままに、そんなだからドラマとしても薄く、展開も行き当たりばったり。どうしようもない
正直編集が仕事をしていない感が相当ある
この作品は作中で平安~平成までのファッション物が大量に出てくることに加え、背景もめっちゃしっかり描かれているため、作者が沢山の作画用資料を集めてそれを自分の絵柄に落とし込んでいることが分かる。特に背景。執念を感じる
が、設定や時代考証に口を出す人間がいないために物語の厚みが薄く、結果として惜しすぎる出来になっている、ように感じた。このオチでGo出すってマジ? この画力をこんな終わらせ方で良いと思える奴おる? おらんだろ
マジでストーリー側にやる気ねえなって感想しか出てこん。僕はラノベ数本出版しただけのオタクだけど、ノラガミのストーリー展開は苦しかったんだろうなってのが分かる。分かると思いたいし言いたい
やりたい展開と、絶対に入れたい画と、動かせない設定。この3つが出てくるタイミングがよくある。で、何とか全部共存させられねえかな~~~と欲張ると、ノラガミのように窮屈な作品になるのだ。これは設定作りこむ系の作品によくあるジレンマであり、同時に設定が実は細部まで詰められてないから起こるバグである。これを解決するには蚊帳の外にいる他人に解決してもらうか、ちゃんと論理だてて全てをひも解いていかないといけないのだが、この役割を果たすべきなのが漫画編集者だ。止めろよ。ゴーサイン出すだけが仕事じゃねえんだぞ
とはいえここまでの内容だと僕の批判もふわっとしすぎなので、以下でもうちょい具体的に描いていく
1.設定の雑さ
この作中における神様は神様だ。人の姿を取り、意思疎通が可能で、単体ですげー力を持つ場合がある。触れたもの全てを呪うとか、天から雷を降らせるみたいな能力を持っていたり持っていなかったりする
そして、その神様能力に加え、彼らは「神器」という武器を扱うことが出来る
この神器の基は死んだ人間の魂、つまり霊体だ。ソウルイーターの武器とかBLEACHの斬魄刀みたいな感じで、霊体が武器に、武器が霊体に変わるシステムが存在する
死んで立ち尽くしている魂に神様が名前をつけることで、それを死後の別人として召し上げることができ、その人は神様に名を呼ばれると神器として武器化することができるようになる
が、この神器システムが結構面倒というかガバガバ設定であるのと、神器の能力設定がゆるっゆるである
幾つかある欠点を挙げていく
一つ。神器システムのゴミ具合
神器となった魂は生前の記憶を失う。朧げに残ってはいるものの、死後は別人となる
で、その状態の人が神様につけられた名前ではなく生前の名前を呼ばれたり、生前の記憶を取り戻すと、発狂して死ぬ。なんやこのクソシステム
つまり「神様達が神器を使ってバチバチやりあうバトルシステム」の土壌があるのに、戦闘中に「お前の神器、生前は太郎って名前でしたよ」と言うだけで敵の武器が勝手に発狂して自滅して成仏するのだ
このクソ設定のせいでバトル漫画の道が断たれた
この作品は名前・名付けというものに凄く拘っている
それ自体はまぁ良い。日本神話や仏教・儒教でも名付けに価値を持たせてきた積み重ねがあるし、BLEACHもやってたし、様々な小説などでもそれは意味のある行為だと僕達日本人は刷り込まれてきている
が、名前というコンテンツ一つで展開引っ張りすぎ。いつまでその話しとんねんってぐらい長いことこの作品は「名前」という要素に物語のオチを任せすぎている。出てきてもいいが、これ一本で飯を食えとは言ってない
また、説得力もない。「名前っていうのは、親から与えられる最初の愛」みたいな感じの説明や作中の位置づけが一切入ることなく、「読者はみんな、名前ってめっちゃ大切だと思ってるよね?」ぐらいの説明のなさで話がゴリゴリ進められるからたまったもんじゃない。行間嫁ってレベルじゃねえぞ。名前好きすぎだろ。好きすぎるのにキャラクターの名前適当に付けてるからもう説得力ねえよ
二つ。神器の強さがガバ
神器は何らかの特殊能力を持っているのだが、これが活かされることはほぼない
神様の能力×神器の能力でバトルや! と言いたいところなのに、なんとここに「自分の神様に忠誠を誓うと【祝の器】という普通の神器より数段強い武器になれる」設定と、更に「神器は相手に対して気後れしていると弱くなる。祝の器であれど、並の神器に一回頭を下げてしまうだけで生涯不利になる永続デバフがつく」というとんでもねえ設定が付く。しかも最後の設定は「吹っ切れていればデバフ無効可能!」になる
祝の器設定は分かる。男の子そういうの好き
けど、後者は無理だ。理屈はギリ分からんでもないが、それにOK出すと白ける。初対面同士なら鍔迫り合いできるのに、相手に貸し作った瞬間からその後一生一方的に惨殺されるんだぜ。話にならねえよ。権力的に上にいる奴や先に産まれた奴有利すぎやろ
おそらく主人公が最初の方であまりに強くなりすぎたところを弱くするために入れた設定なの……かな……と思わなくもないが、それなら祝の器をもうちょい母数増やしてやればええやんって感じだった。結局祝の器システムいらなかっただろってぐらい使われてなかったし意味がなかった。アホ
三つ。神器の能力がガバガバ
神様出てくるんだから、神様が持ってるものを神器の名前として使ったりして、それらしい能力が出てくるのかなー、とか思ってた時代が僕にはありました
そんなことねえの。っつーか神器としての能力が全く説明されず存在すらしないように見える奴が大半で、主人公やその周りだけやったら強くて便利に設定されてんの。設定スカスカ~
悪の親玉は対神器必殺能力持ちで、主人公は最強近接武器と最強遠近両用武器と最強万能武器を持つ。なのに途中でスポットライトが当たった神様の神器は、主要なものですらふわっとした性能しかない。格差社会ここにあり
更に更に、神様の中で一番偉い奴は神器すら使わないで最強みたいな顔してるし、たまに出てきてもなんかよく分からん。説明のための尺を用意してよかっただろ。バトルシーン、終始何やってるか分からんというか、どこにどう心躍らせればいいのか戸惑うレベルだ。一体僕は何に期待しながらこの戦闘だけがひたすら続くページを読み進めるべきなんだ?
ここまでやるならバトル要素ゼロにしてドラマで進めるか、バトル要素にガン振りしてドラマを切るかしてほしかった。神器の設定要素、全部なくても誰も困らん
2.ヒロインの空気化
序盤はまぁいい。キャラとしては好きだったし、最初のころの雰囲気は嫌いではない
しかし、中盤からガチの空気になる。最後の最後に神器にする展開の想定だけはあったんだろうなー、って感じで、後の15巻分ぐらいはずーーーーーーっとマクガフィンのような存在に成り果てる
展開がカスすぎだ。この作品は序盤は死者の魂の設定を出しながらドラマストーリーを進めていくのだが、途中から神様関連の問題にシフトしていき、以降ずっと神様達が中心になる。すると一般人であるひよりちゃんが話に入ってこれなくなるのだ。当たり前体操~
ここでBleachみたく霊体でも色々できますよ~みたいな設定があって神様達との間を取り持つ役割が与えられるとか、ひよりちゃんは特殊体質だから神器使えたり、レーダー役とか回復役みたいなことできますよ~として一緒に戦闘参加させるとか、いっそリボーンのようにガチで空気化させるなら良かったものを、一般人Aのまま一生最後まで走らせて、特に出番も役目もないのに毎話登場してくる、みたいなことをされたのがあまりに苦痛すぎた
ヒロイン力が足りない。主人公にとって大事なキャラになるまではいい。それからも大事にさせ続けたいなら設定でゲタを履かせてやってくれ。あんだけ危ない危ない言って危険な目にも合ってるのに突き放さないのは怠慢でしかないし、最後の方なんて必要がなかったのに危険な目に合わせてたの無体すぎる。野良の説得役として出てくる場面も別に要らなかったよな。薬にも毒にもならないコメントばっかして、驚いた顔させて状況説明させてれば満足か? 僕は不満でしたよ
お父様は都合のいい設定と展開に守られてるのに、ヒロインは都合のいい設定が一切なく都合のいい展開でゴリゴリに誤魔化そうとされているのが気に入らなかった
守られるヒロインか一緒に戦うヒロインが欲しいのであって、自分から危険になりにいく戦闘力ゼロのヒロインはちょっときちい
3.主要キャラのモブ化
この作品はキャラクターが多いのに多くないという、いわばキャラ使い捨て戦法を取っている作品である
一回スポットライトが当たったキャラクターはマクガフィンになる。話を前に進めるだけの舞台装置に成り下がるのだ。ノラガミは序盤の方で毘沙門天、恵比寿、タケミカヅチという3神にスポットライトを当てて長尺のストーリーをするのだが、こいつら皆スポットライトが終わると突然意思をなくして「それっぽいこと」だけを言う一般市民Aになる。ファンアートを描いていた人間も真顔になるぐらいつまんねーことしか言わねえしやらねえの
最終決戦で少しは良いところあるかなー、と思っていたが誰一人として戦闘参加ナシという暴挙。くだらね~~~~~~~。保険を潰したとか、他の問題に対処してたとか色々説明はつけられるけど全然協力感も緊迫感ねえの。こんな展開に男の子が燃えることはできない。無理無理。お遊戯会じゃねえんだからさ
毘沙門天編は毘沙門天個人のビジュと、兆摩というキャラクターの良さで保った
恵比寿編は恵比寿のビジュとキャラだけで保った
タケミカヅチ編あたりから様子がおかしくなり、全てが狂いだした。マジおもんねえの。まずタケミカヅチというキャラに魅力がない(代替わりと祝の器という今までやった話しか出てこないし本人の人格形成やドラマ部分が一切ない)し、広いフィールドと天空まで使ってやることがバカモブ達によるくだらない三文芝居というつまらなさ。もうちょっとさあ! あるじゃん!? もっと戦えたじゃん!? 別にヴィーナあそこまで馬鹿にしなくても色々やりようあったじゃんね!?
大体タケミカヅチ編の最後の三回ギャンブルみたいなのアレ何!? それっぽい展開ではあったけど、結局何の判定に基づいて勝ち負けついてたの!? マジで意味わかんねえんだけど! 裁判官がゴリゴリの右翼なのに誰があの勝ち負け判定してたのか教えていただけます!? 気合とか根性で勝敗ひっくり返んの嫌なんだけど! これまでの戦い一体なんだったんだよ
あのあたりまでがノラガミをおもれーと思えていた限界だった
そっからはもうめちゃくちゃや。ヴィーナはアホの子にされるし、恵比寿は代替わり関係なしにモブになるし、結構役職高めで戦神という設定だったはずのタケミカヅチは主人公陣営に混ざって後方でイモイモし始めるし。一体何を見せられてるんだよ
4.オチ
父様の過去は悪くなかった。もうちょい練ってほしくはあったし黄泉の国周りの設定がガバガバすぎてどうしようもなかったけど、天を忌み嫌い憎み続けるに至った経緯としてはとても良い過去だったと思う
雪音の過去も、もっとスパッと終わらせろよとは思ったけど、話の落ち着け所としては良い過去であり、良い姉との帰結ではあった
他全てが見るに堪えない
主人公以外のシーンは全部1/3で良いし、黄泉の国とか世界を反転させるみたいなシステム周りの設定はもうちょいガッチリ固めてほしいし、主人公達の戦いや途中でかませ犬として登場する神様はもっとしっかり何を魅せたいのかを明確にしてほしかった。シリアスな絵柄で行うギャグマンガ路線に移行したのか、バカを嘲笑する楽しみ方を推奨されているのか本気で迷った
バトル漫画してたのは毘沙門天までだったし、ドラマ要素は常にあと一歩が足りなかったように思う。深堀りが足りてない。よかったねめでたしめでたし、するにはゴールとなる画の他に、キャラクターを表したり話にオチをつける「一言」と、それに至るまでの「丁寧な展開の積み重ね」が必要だと自分は思っているので、画だけはしっかりしているのに話部分の要素二つをどちらも用意する気がなかったのは本当に残念だった
なんだろう。平成初期って感じ。「考えるんじゃない、感じるんだ……」とでも言わんばかりの、空気と画力でごり押しときゃええやろ感が、残念さの根柢にあった
特にノラガミは結構ディープ寄りのドラマを主体としているため、そこには必ずハッピーエンドに至るために必要な言葉の積み重ねが必要だった。もうちょいふわっとした作風なら空気でゴリ押せるというか、清涼感を感じられる終わり方なら別にいいだろうとなるのだが、人の生き死ににまつわるドシリアスやるならもっと中身のあって筋道のたった会話が必要だろう、と僕は思った
まとめ
ノラガミは少年向けバトル漫画
の、皮をかぶった、平成初期の少女漫画だと思って読めば、適当な満足感が得られると思う
令和のコンテンツ量を生きた人間にとっては苦痛に感じる部分が多い気がする。話づくりに関する要素が何もかも薄い。減塩オニオンスープをひたすら飲まされる感じ。結構おいしいのだが、そればっかりだと飽きるし、具が一切入ってないので物足りないのだ
クルトンぐらいは浮かべてくれ
