ルフランの地下迷宮と魔女ノ旅団は神ゲーだという話

 どうも

 前の記事書いてから3日と経たずというか、前記事のGE3レビューは実は完成してなかったりするのに次のゲームのオススメ紹介に入ります

 

 今回オススメするのは「ルフランの地下迷宮と魔女ノ旅団

 悪名名高い日本一ソフトウェアが2016年に発売した最高傑作ターン制ダンジョンRPGです

 

 発売日がかなり前なのになんで今更かというと、このゲームPS VITAで2016年、steam版で2018年発売であり、僕がこのゲームの存在を知ったのが去年だからですね

 購入してのめり込んで一気にドガガガガッとやりはしたのですが、リアルの時間の都合とか諸々存在し、またブログを書くにあたってもう一周する必要とやり込んでくる義務があったためにこのタイミングで書くことにしました

 

 マジで神ゲー過ぎるのでいつかブログ書きたい書きたいと思い続けていたんですよね。これ書くためにブログ始めたまである。GE3レビュー? 知るかんなもん今はこの神ゲー

 正直ここ数年内だとトップクラスに面白い。十三機兵のレビューは前世のブログで書いたので、書いてないものだと多分ルフランが一番面白いゲームなんじゃないかなってぐらいには面白いです

 

 それでは早速やっていきましょう

 

 

 

【どんなゲームなの?】

 ダンジョン探索型でシンボルエンカウント形式のターン制RPGです

 要は野生ポケモンの姿が見えて、フィールドギミックが多めで探索要素が増えたポケモンだと思ってください。いやポケモンだと思って挑まれると困るんですが。世界樹シリーズって言った方が伝わりそう。アレが一番近い。難易度というか理不尽さを少しマイルドにした世界樹って感じ

 

 そして、そこに神シナリオが付け足される

 

 マジでストーリー最高。脚本の脳みそ開いてみたくなるぐらい面白い

 ルフランは本当にストーリーが面白い。伏線や謎が大量にあって全て回収されるし、キャラクターがどれもこれも最高にイカす。BGMのパワーを借りて雰囲気バリバリに作り上げられてて、設定も奥深く考察しがいの塊。もう余すところなく全部美味い

 更にはバトル部分すらもかなり良い出来になっているため全てが相乗効果を発揮しトンデモないことになっている。100点*100点に追加点諸々とゆでたまご理論が掛け合わされ999999999999999999億該点ぐらいだ。マジでめたくそおもろいぞこいつ

 

 

 

【ゲームシステムについて詳しく】

 先にゲームシステムについて話します。シナリオについて語りだすとネタバレ過多というか何一つ喋れない骸が出来上がるのでこっちが先です

 

 上にも書いたように戦闘システムはターン制RPG

 ドラクエとかが一番イメージしやすいかな。プレイヤーサイドも敵サイドも基本パーティーを組んでる。RPGと言うからには分かるようにキャラクターには役職(ロール)が存在してて、盾役キャラは味方守るのに長けてたり、槍騎士キャラは攻撃力に長けてたり、魔法使いは遠距離攻撃強かったりする

 そんなキャラクターたちに持たせるスキルを考えたり、装備を考えたり、キャラごとのシナジーとかパーティー構成を考えたりして、様々な種類のダンジョンを攻略し、ボスを倒してシナリオをエンドに導こうって感じ。まぁシナリオのあるRPGのテンプレですね

 

 ターン制RPGの問題は飽きることである

 

 やることが一緒なのだ。毎ターンこっちが殴って、相手が殴って。魔法使うなり状態異常使うなりアイテム使うなりして。毎戦闘毎戦闘やること全部一緒

 必然的に、変化が必要になる。例えばポケモンは「ストーリー」「ライバル」「新ポケモン」「手持ちポケモンの進化・新ワザ習得」「新しいマップ・建物・ジム」「難易度調整(四天王戦など)」等々、プレイヤーを飽きさせないための様々な要素を散りばめている。シリーズ物の強みであるキャラクターの多さとかもあり最新作のポケモンについて語ることは不可能な量のコンテンツがあるが、しかし初代ポケモンからの進化や、他のRPGである「ドラクエ」「FF」等の変遷を眺めれば、ターン制バトルRPGモノにとっていかにプレイヤーを飽きさせない・楽しませるることが大切なのかは理解できると思う

 

 前置きが長くなったが、結論を言うとルフランは飽きさせないための工夫が随所に仕込んでいる

 このルフランというゲームは主に三つのパートに別れており、拠点→ダンジョン探索→戦闘→ダンジョン探索→戦闘→……→拠点といった形である

 

 このダンジョン探索と戦闘の部分がゲーム部分にあたるのだが、ここが中々に面白い

 ダンジョン探索中に壁壊してショートカットしたり、姿消してメタルギアソリッド始めたりできる。ダンジョンの形状も複雑怪奇かつ七面倒くさい設計のものが多々あるため道順を覚えたり効率を考えたりとそれなりに楽しい思考の時間が生まれる

 戦闘も程よい。戦闘スピードはかなり良い(ゆっくり情報を見たいなら遅く、高速でオート戦闘したいならボタン連打ですぐ終わる)し、戦闘システムも悪くない。ユニットの育成や装備等も面白く多くの要素が散りばめられている

 

 何よりUIとサウンドが良い。僕はゲームの良さはこういった小さいところで全て決まると思ってる

 ルフランでのダンジョン探索と戦闘は操作感が良いんだよね。ショートカットがいくつか設定されていて、そこから欲しい情報をすぐ引き出して活用することができるという快適さ。攻撃の種類に合わせて流れる音の心地よさや、弱点を突いたり部位破壊が成功できた時の気持ちの良い音と振動

 戦闘に使われてる音はどれもこれもかなり良質で、「この音=今〇〇をしている音なんだな」と瞬時に分かるぐらいしっくりくるサウンドが用意されていた

 

 マニアックだと思われるかもしれないけどちょっと待ってほしい

 聞いてるだけで気持ちいい音や不快な音ってあるでしょ? 例えを挙げるなら、ガラスをぶっ壊す音は爽快感あるし、黒板ひっかく音は不快ですよね?

 つまり「自分が思い描く気持ちいい音が、戦闘毎に流れてくる」っていうのはかなりデカい要素だと思ってる。ターン制RPGはどう頑張ったって戦闘が多い。全プレイ時間の5割以上は確実に戦闘だ。その戦闘の時間を最も強く支えるのは「戦闘BGM・戦闘時サウンド・操作性・エフェクト」であり、これらがしっかりしていなければターン制RPGの土台である戦闘そのものに対するうんざり感が生まれてしまうのである。逆に言えばこの部分が優れているならば、プレイヤーは定期的に心地いい時間を過ごせるということでもあるのだから

 

 そこらへん、ルフランはかなり良いよって話

 ゲームシステムそのものについては下の方でかなり長く書きたいと思うので省略するとして、操作性とシステムサウンドはとても良かった

 まぁターン制RPG自体をつまらないと感じる人もいるかもしれないがそれは向き不向きだ。少なくとも「飽きることへの対策」はかなり精力的に施されているように感じた

 

 他にも色々とゲームシステム部分に関しては褒め称えたいところや物申したいところがあるものの、結構散った文章になりそうなので纏めて下の方で書こうと思います

 

 

 

【あと付け足しとくけど絵がいい】

 言い忘れてたけどマジでイラスト良いぞ。マジのマジのマジで良い

 

 公式絵やパッケージ絵見てピンと来たなら買え。今すぐ買え。作中絵はこの絵柄以上のものしか出てこないからな

 戦闘に使うキャラクターも、モブキャラも、勿論ストーリーのメインキャラたちも全員が全員、絵柄にフィットしてる。敵キャラも超絶良い味出してる。この絵柄だからこそ戦闘の良さやシナリオの良さが引き立っている部分は絶対にある

 

 絵というかグラフィックの良さについては僕そこそこうるさい厄介オタクなんだけど、ルフランに関しては二の次である。いや勿論素晴らしいよ。上にも書いたけどこの絵の良さは確実にこのルフランという作品の評価を上げるのに貢献してる。でもメインはストーリーとゲーム性なんだ

 

 この素晴らしい絵ですらメイン要素となるには惜しいほどに、このルフランという作品のストーリーとゲーム部分は物凄いパワーを持っているのだということを理解してほしいし、買ってない人たちは期待してほしい

 

 

 

【ストーリーについて】

 ここからネタバレを過分に含みます

 個人の考察等も含みますので未プレイの人はブラバして購入してクリアして考察してからまた来てください

 

 

 

 本当に面白かった

 伏線が開幕から怒涛の勢いと数で散りばめられており、後から見ればというかクリア後二週目をやると「あぁだからここはこうなってるんだなぁ……」と感慨深くなる。今までなんとなく見ていた景色全てに意味があったことを知るのだ。アレもコレもソレもドレも伏線なのである

 

 自然、二週目プレイにもすぐ手が伸びる。今すぐ確かめに行かねばという衝動に突き動かされる。だいたいのゲームの二週目プレイって手が伸びなくなりがちなんだけどね。ランス10とかいうバケモノは除くけど

 

 まぁ二週目の話は置いといて

 ルフランのストーリーの良さの根底には世界設定と、僕らが攻略していったダンジョン一つ一つに存在していた設定の良さがあり。そして何より、ルフランの中に生きるキャラクターたちの良さについて語らねばならないと思う

 

 

 

【世界観について】

 この話は、夕闇の魔女ドロニアとその弟子ルカが、ルフラン市にあるダンジョンを攻略しに訪れるところから始まる

 

 ダンジョンには「鍵」がある。三本集めれば願いが叶う鍵だ。それが欲しいがために、ドロニアは妖路暦程(通称レキテーちゃん)という意思を持つ魔本を使ってダンジョンを攻略しようとする

 

 ダンジョンの先は異世界だ。レキテーの能力によって様々な異世界を攻略し、世界の主たちを倒しつつ鍵を探していくドロニア

 

 しかし、話はダンジョン攻略だけでは済まない

 ルフラン市にはもちろん人が住んでおり、怪しげなことをしているドロニアたちを警戒する者、金の匂いを嗅ぎつけて擦り寄ってくるもの、ドロニアの容姿に惹かれ襲って来る者など様々だ

 

 ドロニアは時に魔法を使いつつ、また優しい人間たちとも少しずつ関わりながら、鍵を探す

  話はルフラン市だけでは収まらない。魔女という存在はドロニアだけではない。力を持つ魔女たち全員が鍵を探しており、ドロニアは中でも多くの魔女に敵視されている

 

 様々な悪意渦巻くルフラン市と、多くの出来事が起こり続けるダンジョン

 この二つを行き来しながら膨らみ続ける物語こそが、ルフランの地下迷宮と魔女ノ旅団という作品の目玉だと思います

 

 

 

【考察】

 一応攻略順に

 攻略順にさらっと触れた後、一気に時系列順で話していこうと思う

 

 

 

・深碧のカンパニュラ

 『濁った緑』を基調とした土造りのダンジョン

 世界観としては普通に人間が暮らしている世界であり、中でも精霊のいるダンジョンって感じ

 

 ダンジョンとしてはまぁ普通。チュートリアル的な側面が強いのと、初見は地下3Fまでしかないことに加え、表ボスがいないのであまり歯ごたえはない

 地下4F以降へも行こうと思えば行けなくもないのだが、恐ろしく敵が強い。ここの地下7Fは攻略としてはかなり最後寄りのため泣く泣く放置である

 

 敵は本当にモンスターって感じの奴らが出てくる

 マニートとかいう反応しづらい名前のモンスターが結構良い味出してました

 泣き虫な精霊とお喋りな鳥のコンビ[大精霊ドゥミナ&ダリオ」がいるけどまぁ放置。この段階で戦うにはちょっと強いのと、一応ストーリー分岐が存在するので対応は慎重に

 

 

 

・アストルム王国

『コビトの国』であり、全ての物体がプレイヤーの視線より下に置かれている

マップとしては国(こっちの大小感覚からすれば町が正しいか)。カンパニュラが由緒正しきテンプレートな洞窟型ダンジョンであったのに対して、こっちは町探索といった方がしっくりくるやや開放的な世界だ

世界観としては、コビトが主生物。コビトっていうのは豆粒みたいに小さい人型の生き物であり、想像通りの「小人」だと思っていい。喋るし知能もある

 

そんな奴らが住む世界に、向こうからすれば巨人の僕らがやってくるわけだ

ちょっと鍵探しますよー……なんて信じてもらえるわけがなく戦闘である。コビトたちは「デカイノガキタゾー!」「ヤッツケロー!」「デアエデアエー!」的なノリでワラワラやってくる。軽いガリバー気分である

 

アストルムにきてまず思ったのが、世界観がガラッと変わったこと

カンパニュラは洞窟型ダンジョンだった。濁った緑と土の肌色いう綺麗とは言い難い配色ばかり見ていたため多少の閉塞感を感じていたのだが、ひらけた空や視界、普通の緑色、大きく取られたスペース等がそれなりにあるコビトの国はかなり受ける印象が正反対であり、『変わったな』と意識できるような設計がなされていた

ダンジョンのボリュームは上がった。カンパニュラが楽すぎたのはあるが、明らかにここで量と難易度を上げられたな、という実感を得る

 

敵はコビト。彼らは芋虫や気球に乗って敵として現れたり、中には砲台を引きずって襲ってきたりする。中々愉快である

が、途中から巨人兵とかいう明らかにサイズが大きい敵が登場する。よくある「コビトが集まってでっかく見せているのだろう」というスイミー理論が思いつく。その登場に合わせてコビトたちも小隊だったのが中隊になったりするもので、ダンジョンの広さと相まって中々にきつくなってくる

 

ボスはコビトの国で一番偉いペコリーノとかいう人間の女の子

……多分、人間。コビトでないことは確か

戦闘時や倒した後にこのペコリーノと色々会話をするのだが、実はペコリーノちゃん悪い子だった。コビトをナチュラルに見下しており、先ほど出てきた巨人兵たちはコビトに酷いことをして無理やり巨大な鎧を着せていたのだという裏話を暴露しだす

当然コビトたちは激怒。ペコリーノはコビトたちによって連行され、後日あられもない姿になって裁かれたのを目撃することになる。コビトたちにミニチュアな街並みとファンシーな世界観なのに内実は中々にグロッキーな世界だ

 

 

 

・地下帝国メルム

『生ぬるい岩』で出来た洞窟を探索していく

マップとしては暗いダンジョンだ。しかしカンパニュラと違って、たまに大きな広場がある。しかし陽の光はなく、四方八方は岩で囲まれており、しかも下に続く階段と穴だけが続いている。地下帝国という名に相応しいダンジョンだ

 

世界観としては、どうもここはかつて栄華を誇っていた『鳥人帝国』らしい。おいおい鳥人って。ここ地下ですけど。鳥っぽいやつ一匹もおらんし

が、どうやらマジらしい

鳥人という、翼の生えた人間が住んでいたっぽい。しかし飼っていたペットに反逆され全滅し、今ではかつての栄光は消え、こんな寂れた暗い地下帝国へと埋もれてしまったのだとか

 

現在この地下帝国メルムくんを統べるのはトローリアという生き物だ。一言でいえば『メタボで裸の汚いおっさん』である。もっと言うのであれば『エロ同人誌の竿役のきもいおっさん』をモンスターにしましたって感じの風体をしている。実際そうである

言葉は喋らないし知能もなさそう。しかし図体はでかくプレイヤーたちの2倍以上あり、広場を隈なく徘徊して血気盛んに襲い掛かってくる。そしてクソ強い。ここが地獄か?

ファンタジーに出てくるオークとかオーガとかを超絶汚くした感じのバケモノこそがこの世界の主生物なのである

 

そして、ここには別の人間「ロシナ」が登場する

ロシナは地下帝国メルムに調査に来た人間だ。『鳥人帝国』が滅びた原因を探るべく調査団としてやってきたが、仲間たちとはぐれてしまっている。「もし見つけたら教えてほしい」とロシナはこちらに言って、別行動でそれぞれメルムを攻略していく

これまでになかった要素だ。カンパニュラにもアストルムにも敵か中立しかいなかった。しかしロシナは見た目が人間の女性であり、意思を積極的に疎通してきて、会話もちゃんと成り立つ『個人』だ。敵対して戦闘ということもない。

明らかにストーリーに幅が生まれた

 

そして予想通り、このロシナ調査団が良い味を出した

地下帝国メルムが始まってから速攻で気付くと思うが、ロシナ調査団の全員は死ぬ。数人は無慈悲に「落下死」「雑魚敵にやられたようだ」的な雑魚死であり、とある女性はプレイヤーたちの目の前でトローリアに犯されて死ぬ。ヒューッ。読めてたけどまさかやるとはなァ!? これは薄い本だったっけかァ!? ちなみにイラストはないです

 

トローリアという敵のデザインと、ロシナ調査団という被害者の存在により、地下帝国メルム攻略は本当に重苦しくなる。ストーリー的にもキャラクターが可哀そうな感じでポンスカ死ぬため重いのだが、戦闘的にも重い。ダンジョンも長いし探索に時間かかるし、トローリアはマジで強いのだ。硬いし一撃が重すぎる。状態異常まで持ってる。しかも見た目マジで最悪汚すぎる。もう勘弁してくれぇ……

 

などと次々くるメンタルへの荷重に耐え、最深部にて呪術師トローリカというトローリアのボスをぶっ殺す。ちなトローリアと戦いすぎたせいでトローリカくんは雑魚でしたハハ

ここでロシナの目的が実はプレイヤーたちと同じ、願いを叶えてくれる鍵を探していたというものであり、トローリカの死骸から鍵が現れて横取りされるみたいな展開があるが、まぁシナリオ読んでればこの後の結果はお察しだ

鍵は偽物。仲間を殺し召使いを殺し、色々なものを捨てて捨てて頑張って手に入れたものがゴミだったことにショックを受けたロシナは近くにいたトローリアに呆気なく殺されましたとさ。オシマイ

 

このあたりで僕は「このシナリオライター……さてはやりおるマンだな?」と、片手で操作していたXboxコントローラを両手で握りしめだす

地下帝国メルムは本当に雰囲気が出ていた。ストーリーの先が気になって仕方ないレベルには、このメルムの空気は良かった。あ、別に僕グロとかリョナが好きなわけじゃないっすよ? ただまぁ重苦しくて救われない話って結構面白いじゃないすか。賢そうな女性が泣いたり愕然としたり落ち込んだり諦めたりする姿とかって結構良くない? よくないかなぁ……

 

 

 

・新緑のフェーヌム

『モンスターの森』がテーマのダンジョン

アストルム王国とは反対に、今度は主人公たちが小さくなって森の中を探索する。主人公が小さくなるとどうなるかって? 今まで普通にぶっ殺してた雑魚が巨大になってめっちゃ強いんだよ!

マップとしては葉っぱや木の根が張り巡らされた森の中をひたすら歩いていく。視認性がかなり悪いものの、まぁ特筆することもなくそれなりに道中も面白くといった良質な感じ。グリム系なファンタジー色が楽しめる。まぁちょいグロいんすけどね

 

ストーリーとしては「人間の友達を助けるためにハチが色々頑張る話」

 

 

青年トビーと目の見えない青年ニコという二人の人間に出会うところからフェーヌムはスタート。トビーに「夕飯に使うハーブがそこの森にあるから取ってきてよ」となぜか出会って5秒でパシられ、しかも森に入った瞬間に外から閂下ろされて出れなくなるというスタートダッシュを決める。僕何か悪いことしましたっけ?

 

煽り性能バリ高な花子法師、フルーラに鍵守れと命令されて望まぬ不死になったミノムシ公、仕組みが分からないままバトるになるイモムシ列車等々、中々にファンキーな森を歩いていく

ダンジョンが長いのと、結構道中が面倒くさい(強敵シンボルが一生徘徊してるのでマップが埋められないというストレスと、終盤がマッピング不可避エリアで更にストレス)。そして花子法師はバリボリ喰われるし、ミノムシ公は話が通じる常識人だったのに鍵のお守りから解放されて昇天。メルムほどではないが救いがない。このゲーム、さてはよさげな奴から死んでいくな?

 

フェーヌムは登場した先からキャラクターがバッタバッタ死んでいくため正直メルムより気は楽。そんな感情移入できるほど関わってないしね花子法師もミノムシ公も

ひたすら歩いてボスのハチをぶち殺す。四肢がめっちゃもげたけどまぁ普通に攻略可能。ボスバヂは左目を失いつつ逃走していくが、こっちとしてはハチから鍵手に入れたのでヨシ。あとはこの鍵がメルムの時みたく偽物じゃないことを祈るだけである

 

ここで最初に出会ったトビーとニコの元へ行くと、なんとトビーくん左目を怪我していらっしゃる。んん!? どういうことですかな!?

その後、家の前にあるハチの巣をつつくとボスバトル発生。クッソ雑魚いハチを数匹蹴散らして終了。その後またトビーとニコの元へ訪れると、ニコが蜂蜜と蜂の死骸を持っており……

 

トビー=ハチの化身。ニコはガチ人間で、トビーはニコのために色々やってたってことらしいです(公式設定資料集より)。なんか同じ位置負傷してんなもしかして? ぐらいに思ってたけどやっぱりそういうことだったんすね

鍵の力でハチから人間に化けてたとかいうオチでもなさそう(それだとボス後にトビーが人型になってる説明がつかない)なので、どう考えるべきか曖昧だった。公式設定資料集で一番スッキリできたのはココかも

 

しかしなんで目の見えないニコのために、罪もない僕らが襲われなきゃいけないんすかね。カニバリズム的な文化でもあったんだろうか。健康な人間の目を食べさせればニコの目が良くなるとか?

それとも外から来た人間は皆敵みたいな? もしくはニコに人間の友達出来るのが嫌だ俺がニコの一番の友達なんだ的な嫉妬……?

 

トビーが攻撃的な理由がついに分からなかったけど、まぁ森の道中が面白かったのでヨシ

ストーリーとしては一番薄味な世界かな

 

 

 

・三領主の塔ウンブラ

異世界の洋館』といった風合いのダンジョン

ここがおそらく本作鬼門。マジで長かった

世界観としては、世界が三分割して統治されている。それぞれの領主が住む三つ塔は互いに隣り合うようにして建っており、領主同士は敵対しあっていて、その内の誰かが鍵を持っている可能性が高いらしい

 

要は三つの陣営が争っている最中、膨大な階層を持つ三つの塔を踏破しつつ、それぞれの領主が好き勝手出してくるお使いをしなければならないという中々にクレイジーな世界である

マジでダンジョンのボリュームがやばい。一つの塔だけでも今までのダンジョンよりちょい狭い程度の大きさなのに、そんなのが三つあってしかも上は9F、下は1F、合計10階層もある。ゲロゲロゲロ

ちなみに三勢力いたらしいが、その内一つはプレイヤー到着時のちょい前に死んでるらしいとのこと。やったぁとはならない。領主の死んだ塔もしっかり攻略しなければならないからだ。だる……

 

まず自由奔放で快楽主義者的な領主様、大魔王フュルフュールの塔を攻略

すると「キングアリス倒してきてくれ」といきなり言われ、大量の良質な武器防具を渡される。キングアリスとはもう一陣営の領主だ。見た目がかなりゴツくて性格マゾヒストという敵に回すと至極面倒くさそうな領主に初対面でこんなこと言われたらまぁ断れるわけがない

 

続いてキングアリスのいる塔へ赴くと「会議中である」「議会で承認を取らねば」等々言われてアリス本人との面会拒否を喰らう。どうもこっちはお役所仕事で国を回している生真面目な領地らしい。

と思っていたらなぜか議員のモンスターに捕まえられて地下1Fに投獄される。生真面目っつーか頭が硬いっつーか、狂信者の群れだよこれ。キレたら人の言うこと聞かなくなるタイプの領民で構成されてる

 

プレイヤーはまぁ壁壊せるので難なく脱獄。アストルム王国でもそうだったけどプレイヤー君よく投獄されがちである

するとキングアリスから「あの塔じゃ皆が面倒だから、死んでる勢力の塔の最上階で密会しよう」との連絡が。なんだよ話分かるじゃ~ん。でも道のり遠すぎるんですけど。地下1Fから塔の9Fまでこれまた七面倒くさいギミックと長々しい道中をひいこら走って到着

最上階にて可愛らしい外見のアリス君と会話をしていると、「大魔王フュルフュールとボク、どっちに付くの?」と問われる。是認で共闘、否認で戦闘だ。ちなみにどっちを選んでも大筋に変更はない

 

上のイベントの後、キングアリスとまた会話。すると大魔王フュルフュールから貰った大量の武具の中より「ジョーカー」のカードが飛び出して、キングアリスに張り付き、その正体を暴く。なんてモノ持たせてくれてんだあのデブ

キングアリスの正体は巨大な蛆虫だった。アリスは驚き、そしてもう人型に戻れないことを知って悲しく去っていく。ごめんて……

 

アリスの正体を暴いた後に大魔王フュルフュールの元へ戻ると、そこにはにっこりご満悦の魔王様。どうも蛆虫の姿のアリスは領主としては雑魚らしいので目的達成というわけだ

「よくやった」と言い褒美として大量のお金と武具をくれるが苦笑いするしかない。まぁ確かに魔王様はアリスを倒すための武具を僕らに渡してくれたわけだし、実際アリスは無力化されたけどさぁ……

 

ということで、少し話をまとめる

 

まず大魔王フュルフュールと、蠅の王、そしてキングアリスの三人こそがこの世界の領主だ

そして本編開始時には既に死んでいた蠅の王は、アリスの親だ。アリスは蠅の王の子供であり本体も蛆虫である。アリスが親を裏切る形で、三勢力いたところを二勢力にしたらしい

以後、大魔王フュルフュールとアリスが対立。そこに来た僕たちプレイヤーがあっちこっちいった関係で、アリスが割を食って死んでしまったという話

 

レキテーにも書いてあるのだが、混沌と秩序という表現が出てくる

ダンジョンの造りはまさしくそれで、大魔王フュルフュールの塔は混沌というか欲望を開放した形の、言ってしまえばえっちな見た目の敵が多く、キングアリスの塔は秩序を重んじ門番・議員・死刑執行人といった法の守護者といったテイストの敵が多く出現する。蠅の王の塔? もちろん蠅だが

おそらく混沌は過去存在していた蠅の王の統治する陣営で、秩序はアリスが統治する陣営の統治基軸を表している。大魔王フュルフュールの陣営は無理やり付け足すならば『欲望』ってところかなぁって感じ

 

 

ここは少し賛否両論というか、違うところがあるかも

 

 

・記憶のロサテンプス

『ドロニアの記憶』のダンジョン

敵はそこそこで道中も長いがボスはいない。これはドロニアの心象であり、ドロニアの記憶の中に隠してある一本の鍵を取り出し、またドロニアの持つ記憶をレキテーとルカに見せる意味合いで生まれた世界だからだ

 

本編シナリオの中でも一番おいしいところが詰め込まれている

ストーリーはクライマックスだ。今までずっと「攻略対象の世界はどんなところだったのか」について書いてきたが、これらの世界を攻略している間にもドロニアやルカのいるルフラン市ではストーリーが進行してる、っつーかそっちがメイン

 

ロサテンプスは本編シナリオをゴリゴリに進めるためのダンジョンだ

攻略について特筆するところはないし、本編シナリオについては後でどばーっと触れるのでノータッチ

 

ただ一つ言えることとしてはイサラ最高マジ天使可愛いもう結婚してほしいって感じ。失礼、本音がダダ洩れでした以下自重しますん

 

 

 

・死都アマデウス

『死者しかいない孤島の教会』における、物悲しく寂しい物語

ダンジョンとしては広いと言えば広いが、階層が少ない。ウンブラやロサテンプスの長さの前には短いと感じざるを得ない、箱庭のようなマップだ

 

この世界はかなりテイストが変わっている

BGMがかなりガラリと変わったり、モンスター蔓延るダンジョンではなくそれなりに戦闘があるだけのただの教会といった要素もあるのだが、何より話の進み方だろう。プレイヤー主体ではなく、アマデウスの住人ポルテを中心としてストーリーが進んでいく

 

死都アマデウスは孤島だ

四方を海に囲まれており、島の大部分は教会のような建物で埋められている

そこに生きるポルテは毎日、海から流れてくる棺桶を引き上げて、教会の中にある冷暗所へと保管している

壁に穴の開いた、棺だけが並ぶ部屋へと運んでいき、暗い穴の奥へと棺桶を仕舞う。仕舞い続ける。来る日も来る日も流れてくる棺を開け、中にある物を物色しつつ、片付ける。それだけの日々をポルテは繰り返していた

 

死体の安置が目的の島らしい

海の向こうには国があって、そこからきっと死体だけが流されてくるのだろう

ポルテは海の向こうに夢を見つつ、棺桶の中の物品から気に入ったものを取り出し思いをはせながら、毎日お仕事をしている

 

この世界の登場人物はたったの三人

その内一人は魂、一人は神様みたいなものであり、実質生きているのはポルテだけだ。言うまでもないがポルテは孤独だ。親も友もいない。一人でずっとこの島で生きている

 

そんな世界で結構急ぎで鍵を探さなければならない主人公たち。その目の前に、死都アマデウスに住むオラクルという男性が声をかける。曰く「鍵を渡すけど数日待ってくれ」とのこと。よく分からんが待つ

待ちつつ、オラクルの話を聞く。どうもこのオラクル君かなり博識で、鍵とはいったい何なのかや、この死都アマデウスは一体どういう場所なのか等々を教えてくれる

 

死都アマデウスというかこの世界は、既に終わってしまった世界らしい

オオガラスというバケモノが誕生してしまったのだ。バケモノは世界のあらゆる文明や生物を根絶やしにした。既にこの世界には生きている人間はおらず、海から流れてくる棺はオラクルの作った魔法生命体に陸地を漁らせ、死体だけこの島に送っているだけとのこと

オオガラスは世界を滅ぼし尽くした後、他の世界へと飛び立った。アシキモノという分体を置いて去っていったのだ

 

ラクルはオオガラスと戦った最後の人類たちの内一人だった

 

ラクルは滅びた世界でも一人で生き続けた

オオガラスが産み落としていったアシキモノを封印するために、永い時を生きた。封印には死体が必要で、そのために彼は自分の作った魔法生命体たちに世界各地から死体をこの死都アマデウスへと送り込ませ続けている。この教会の地下にはアシキモノが封印されているのだ

 

レキテーの埋まるページやダンジョン各地のメッセージを見ればまぁ流石に分かるが、登場人物がめたんこ少なくてダンジョンも短いのに、この死都アマデウスという世界はかなり重要、というかルフランというゲームのシナリオのおおよその根幹部分が詰まっている

メインストーリーの進行もクライマックスであり、タイムリミットが設定されていたりと中々緊張感溢れる段階だ。そこでこの物悲しく静かでゆっくりとした世界を登場させたのは中々に良い心意気をしておられる

 

途中でオラクルの持つ鍵がポルテに奪われたり、ポルテがアシキモノを神様だと信じ込んで封印解かれちゃったり、実はポルテはアシキモノの分体だったり、アシキモノ復活してオラクル食べられたりと色々あるが、まぁ端折っていい。アシキモノ放置してても鍵は手に入るし

 

どの世界もそうだが、死都アマデウスの寂寥感漂う寂れ廃れたノスタルジックな雰囲気は程々に良かった。ストーリーがかなり薄味な分、空気で戦ってた感ある。まぁメインストーリーの進行が佳境だし、そっち引き立てるためにダンジョンストーリーは薄味でも何一つ問題ないと言われればその通りである

 

 

 

・深碧のカンパニュラ

そして次のダンジョンは最初に攻略したカンパニュラ。戻ってきました

前は強くて攻略できなかったルートより、地下7Fを目指す

 

深部にて妖精王と謁見

どういう分岐を経ようと鍵を貰うことはできる。この後は冥府の魂ちゃんと軽くたわむれた後、ラストダンジョンが解禁される

 

 

 

・黄昏のテネス

シナリオ本編はエンディングへと足を踏み込んだ

テネスという世界のルフラン市、つまりはドロニアやルカたちがいた町が、オオガラス復活により変貌を遂げる。バーバヤーガの野望を阻止すべく、変わり果てたルフラン市を走り抜けていく

 

 

 

さて、シナリオ本編のお話をしよう

 

 

 

最初に言った通り、ドロニアは三本の鍵を求めてルフラン市のダンジョンことカラザの井戸へとやってきた

探索を行うのは僕たちプレイヤーこと妖路歴程だ。ドロニアは指示を出すだけであり、レキテー探索中ドロニアはルフラン市に残っている

 

ルフラン市は田舎の普通の町といった場所であり、雰囲気は中世ファンタジーそのもの。ドロニアとルカの他にも元からいた住民というものが勿論いる

ふくよかな領主代行ペトローネ、ペトローネ商会のイケメン執事クラウス、ドロニアラブな隻眼の修道女マリエッタ、酒浸り羊飼いヌッタマッタ、ネジが一本抜けた貴族のお嬢様ユリエッテ、不細工なパン屋の町娘メイリィ、巨躯で無口な細工師ニムト、その子供の細工師見習いの少年フリッツ、などが物語には関わってくる

他にも途中からダンジョン攻略に姿を現す謎の青年ネルド、ゲスな行動をよく行うルフラン市の衛兵や、ドロニア人形劇を見に訪れる子供たちなど、ちゃんと他の人物も各々生きているのが確認できるまぁ普通の町だ

 

ただしルフラン市には一つだけ、妙なところがある

穢レ人という生き物が夜になると現れるのだ。この穢レ人の姿はのっぺりとした黒い人型である。この穢レ人は夜に外を出歩く人を食べてしまう。いなくなった人間は朝になると衛兵によって報告される。「昨晩の犠牲者は〇〇に住んでいる××だ!」みたいな。ただならぬ空気を醸し出す唯一のおかしなところがこの穢レ人である

 

さて、ドロニアはレキテーに鍵の探索を任せながらのんびりしているのだが、探索が進むにつれルフラン市の人間関係も進みだし、そして本命である鍵も集まりだす

 

その頃になると、今度は魔女が話に関わりだす

魔女たちの大本とも呼べる厄の魔女バーバ・ヤーガや、バーバの忠実なしもべである傀儡の魔女フルネラなどがドロニアの元へと訪れる。理由は単純、鍵の回収だ。バーバの元に魔女たちは鍵の探索を命じられていた。というよりも、元々バーバ・ヤーガこそがこのルフラン市にやってくるはずだったのだ。それをドロニアが自身をバーバ・ヤーガであると偽って宮廷魔女の地位を活用してルフラン市に先入り。バーバに使われるよりも早く鍵を集めて、先に己の願いをかなえようとしていたというのが明らかになる

 

バーバを含めた魔女たちが、裏切りとも取れるドロニアの行動を咎めに行動を起こしたりする過程で、様々なことが起こる

中でも大きい変化をもたらしたのは、穢レ人に市民が食べられた時だ。時にはメイリィ、時にはフリッツが、穢レ人に食べられる。すると、残っていたルフラン市民が豹変しだす

 

それと同時に僕たちプレイヤーにも様々な情報が手に入る。バーバヤーガはドロニアにとってどんな人なのか、魔女とはいったい何なのか、どうして鍵を集めているのかといったドロニアの過去が開示される。ルフラン市の成り立ちについても、街に残って調べ物をしていたドロニアが解き明かす。死都アマデウスにおける「アシキモノ」の描写や、ゲームの進行とともに解放されるレキテーのページの内容

 

今まで「まぁゲームだしな」「そういう世界なんだな」と済ませていた情景や記号の裏側が、どんどんと回収されていく

 

 

 

【本史】

以下、少し妄想による補完を入れながら時系列順に裏側を見ていく

 

 

 

バーバ・ヤーガの前の名前は「フルネラ」といい、大魔女と呼ばれる存在だった

フルネラは被害者だった。死都アマデウスの世界のように、元々は滅ぼされた世界の住人だ。彼女は自分の世界を滅ぼし、尚も異世界へと災厄をまき散らしに行った『オオガラス』を討つべくして立ち上がる。

大魔女である彼女はその才能を使い、自分もまたオオガラスのように異世界へと救いを求めて旅に出る

 

フルネラの異世界移動は、『小部屋』というフルネラが魔法で生み出したものを軸にして行っている

自身の持つ『妖路歴程』をキーとし、世界と世界とをその中に作った小部屋を起点に飛び回る

 

オオガラスは強大だ。倒すためには、滅んだ世界を救うためには並々ならぬ努力が必要だった。才能の塊であったフルネラですら太刀打ちできなかったのだ。異世界を飛び回ることができ、体を乗り移ることで肉体の老いを無視でき、どんな傷をも一瞬で治す魔法すら身に着けたが、それでもフルネラの旅は終わらない

 

 

 

彼女は死都アマデウスの世界に降り立った

 

32頁 初めて“意味”のある“所”に来た。
もしかすると数多世界、上位二十六環の1つかもしれない。
ここより後ろは全て閉じよう。
閉じれば二度と戻れない。
だが、いずれ1つになる。
郷愁を捨てねば前には進めない。
“鍵”の存在を知った今、進むべき道は1つしかないのだ。
――ああ、まさか涙が出るとは。
33頁 海が割れ地が裂けた。
取るに足らぬ程度の“分離体”でこの力。
想像以上だ。
だが、今は戦わねばならない。
一人では無理だ。仲間が必要だ。
34頁 死んだ。
次々と人が死に、都市が、国が滅びる。
聖槍は、一応完成した。
だが、“ここ”では核となる部品の魔力がたりないため、いつ壊れても不思議ではない。
錬成を試みるが、このペースでは真の完成を待たずに“ここ”は滅びよう。
35頁 聖槍の状態はふせ、仲間を置いて旅に出ることにした。
ヤツ以外には告げずに行く。
この気持ちはいったいなんだ?
好きだったとでもいうのか?
36頁 あの時から何も変わらぬ景色――
だが、以前とは別物に見える。
滅び行く世界と共に、静かに朽ち果てるというのか?
馬鹿げている。
だが、こいつは信用するに値する。
これは呪縛だ――人は求める。
当然だ。
偽物でも、ここに置けば十分な目くらましになろう。

 

死都アマデウスは数多世界、上位二十六環の内一つかもしれない

幾つもの世界があるのがルフランの世界観だ。その中でも重要度の高い世界(上位二十六環)の内一つが死都アマデウスと判断したフルネラは、今まで通ってきた世界の小部屋全てを破棄した

 

安全な退路があっては甘えてしまう

私の目指す道は生半可な道ではない。元の世界へと戻れる保険なんてものは捨てて、この重要度の高い安定した世界に小部屋を置いて、この先の旅を進めようと覚悟を決めたのだ

言わばセーブポイントを一つ残してそれまでのものを全消ししたみたいなものである

 

この段階で、フルネラの目的が歪みだしている

おそらくこれまでにも数えきれないほどの世界を旅してきた彼女は、オオガラスという存在の大きさに心が折れたか、もしくは気が狂いだしている

 

フルネラはこれまでの異世界渡航の間に『鍵』の存在に気付いた。鍵を三本集めれば願いは叶う。だが、鍵を使ってどんな願いを叶えても、上位存在であるオオガラスによっていつかは滅ぼされるだけだ

 

――――なら、私こそが不老不死のオオガラスになってしまえば良いのではないか

 

まだこの時は「オオガラスになって世界滅ぼしたい」などという壊滅的な思考にまではなっていないと思う

しかし旅の目的である鍵の使い道が、善性から悪性に傾きだしているのは間違いないと思われる

 

死都アマデウスの世界において、ルフランはアシキモノと戦った

フルネラも死都アマデウスの世界にて、オラクルたちと共にオオガラスやアシキモノと戦った内の一人だ。しかし分体であるアシキモノ相手にすら大苦戦をし、結局世界は救えなかった

アシキモノの封印にだけは成功したフルネラは、この世界ではもう実りがないことを悟り自分もまた異世界へと飛び立つ

 

レキテーに書いてあるように、フルネラはオラクルのことが好きだったらしい

この部分からまだ人の心が残っていることが見て取れる

 

後のアマデウスの世界は、僕たちプレイヤーが訪れた通りだ

ラクルは去ったフルネラの「オオガラスを倒す手段を見つけてくる」という言葉を信じ、彼女に託された偽物の鍵をフルネラに返す役目を律儀に果たし続ける

滅びた世界で一人、フルネラの使いとして誤認されたプレイヤーへと鍵を渡すまで、オラクルはアシキモノを封印し続けた

 

 

 

 

 

次にフルネラは、三領主の塔ウンブラの世界に降り立つ

 

22頁 くだらない世界だ。
ぶち壊してやりたい。
だが、強力な支配者達による戦争が続いている。
一朝一夕にはいくまい。
23頁 この均衡はいつまで続く?
手遅れになる前に手を打たねばならない。
勝者が生まれるとやっかいだ。
24頁 ここはマナが豊富だ。
魔力があらゆる物体の隅々まで満ち満ちている。
ぎりぎり耐えられるといったところだが、このままではまずい。
手を打つ必要がある。
人ならざる者は初めてだが、知性があるならば成功しよう。
25頁 二匹の悪魔。
だが、いかんせん片方は頼りない。
ヤツが溺愛している“子”の方に与えたほうがいいかもしれない。
あと、やっかいな力を持つ“一族”の話を聞いた。
ここが安定したら行かねばなるまい。
26頁 混沌と秩序。
あと一つはなんだ?
支配する上で、排除すべきは“力”ではない。
“考えるという行為”だ。
快楽を教えれば、いずれ考えることも忘れる。
27頁 調停を行うことで、最低限の信用は得た。
子を擁立することで、3分割する。
この均衡はそうそう崩れまい。
あとはこの間に、力を与えるだけだ。
そうすれば、2つになってもバランスは維持されよう。
28頁 ――あの男、何者だ?
悪しき魔女だと? 笑わせる。
目にもの見せてくれる。
29頁 何だこいつは!
ダメだ。直感でわかる。
こいつには勝てない。すくなくとも今は。
30頁 “あそこ”に手をつけるのが早すぎたということか。
まさか、こんなヤツを呼び込むことになるとは……。
くそ、今は逃げるしかない。
31頁 不死不老の力を与えた。
これでもう安心だ。
仮初とはいえ、不死は人を臆病にする。
不老は考えることをやめさせる。
この均衡は盤石だ。
時間が惜しい、さよならだ。

フルネラが訪れた時、ウンブラの世界は戦争真っただ中だったらしい

 

彼女はこの世界をくだらないと評した

だがしかし、大魔女であるフルネラをしてウンブラの世界の支配者たちは強かった。世界のマナが潤沢なため戦えはするが、しかし戦争にただ一人の勝者が生まれるとそれも怪しくなる。互いが争いあっているからこそ、フルネラは満足に生きていられるだけ。早急に手を打つ必要があった

 

策を弄する相手は二人の悪魔――――大魔王フュルフュールと蠅の王だ

だが、蠅の王はちょっと頼りなかった。フルネラが求めたのは膠着状態だ。同じほどの力のある存在が睨み合ってくれていれば、フルネラの目的は果たせるのだから。故に、フルネラは蠅の王ではなくその子に目を付けた。蠅の王が溺愛する子供『アリス』に

 

アリスは蛆虫に生まれながら、その自分の醜い姿を嫌っていた。そんな彼女に力を与え、甘い言葉を囁いて操るのは簡単なことだった 

 

混沌と秩序とはおそらく、蠅の王が生み出す混沌の元に統治された陣営と、アリスが生み出す秩序によって統治された陣営を指している

だがアリスはまだ弱い。いくら蠅の王がアリスを溺愛しているとはいえ、流石に同格とは言い難かった。もう一つ、蠅の王と渡り合う陣営が欲しかった

 

支配する上で、排除すべきは“力”ではない。
“考えるという行為”だ。
快楽を教えれば、いずれ考えることも忘れる。

 

要はどんなに強くても頭アッパラパーなら敵じゃないでしょってことだ

フルネラは大魔王フュルフュールに遊びを覚えさせた。それはエッチな快楽であったり、マゾヒズムの概念であったりといったもので、刹那的な快楽を教えることで戦争や政治といった物事から少しずつ離そうとしたのだ

 

このタイミングで、フルネラは調停を行う

三つの陣営の不可侵協定だ。領主はもちろん、大魔王フュルフュール、蠅の王、アリスの三人

大魔王は新しく覚えた遊びに夢中だし、蠅の王としては我が子が離れて不安だけど魔王とは戦いたくないから願ってもない。アリスはフルネラの傀儡であり、後々調停破って自分の親である蠅の王を殺す気満々なので大賛成

調停は成立。ウンブラの世界には均衡が訪れた

 

フルネラはアリスに力を授ける

アリスはフルネラに恩を感じている。やがてアリスが蠅の王を倒せるほどに成長すれば、自分の言うことを聞く王様が長い間この世界のトップに君臨してくれるわけだ。アリスとしてもフルネラは自分の手助けばかりしてくれるのでやぶさかではないだろう

蠅の王が死んだ後も、知恵をつけ力を持ったアリスと、堕落した大魔王フュルフュールであれば拮抗するだろうと考えた

 

フルネラの目的だが、幾つかある

当初の旅の目的はオオガラス打破の方法探しだったが、今では少し変わっていて何よりもまず鍵の探索である。フルネラは鍵を二本は持っていたが最後の一本が見つけられていなかった

そして何より、フルネラは自身の持っている二本の鍵が誰かに奪われることを恐れていた

 

フルネラは、異世界に鍵を隠して回っていた

異世界を飛び回れる存在はそういない。オオガラスと自分ぐらいだろう。故に、異世界に散り散りに鍵を隠してしまえば誰も三本集めることなど出来やしない

 

フルネラは更に策を弄す。多くの異世界にて、鍵を信頼できる誰かに託すことにしていた。そして万が一異世界を渡る別人物が現れた時のために、ダミーを仕込むことにした

死都アマデウスでオラクルに渡したものも、ウンブラでアリスに渡したものも、両方ダミーの鍵だ。本当に信頼できると思った者にだけ、フルネラは本物の鍵を渡していた

 

 

さて、そんなフルネラだがウンブラにてようやく下準備を終わらせた

ウンブラでの活動もようやくこれからだというところで、彼女は二つの存在を知る

 

一つ、世界を飛び回ることのできる世界樹の一族

一つ、大賢者という存在

 

世界樹の一族というのは厄介な一族だ。なんでも異世界を移動することができるらしい。万が一のためを考えて、ウンブラの次はその一族を滅ぼしに行こう

 

そんなことを考えていると、大賢者を名乗る存在が現れる

自身を『悪しき魔女』だと非難してくる男を前にフルネラは戦闘を挑むが、しかしこの突如として現れた大賢者なる男はとても強かった

撤退しかない。彼女はすぐさま他の世界へと逃げることにする

 

フルネラは出ていく前に、大魔王フュルフュールに不老不死を与えた

不死は人を臆病にする。不老は思考を止めさせる

言わんとしていることは分かる。不死ならば現状維持でいいのだから。不老ならば今やらなくたっていいのだから。強大な力を持つ大魔王フュルフュールの戦闘意欲とも呼べるものを極限まで抜いて、フルネラはウンブラにおける均衡を更なる盤石なものとし次なる世界へと旅立つ

 

後のウンブラの世界は、僕らの訪れた世界となる

蠅の王はアリスによって殺されていた。大魔王フュルフュールとアリスは長い長い間拮抗していたが、僕らが来た頃には大魔王フュルフュールは不老不死に飽き、野心を覗かせ好戦的になっていた

魔王は僕たちプレイヤーをしたたかに利用し、アリスを無力化することに成功したというわけだ

 

 

 

おそらくウンブラ世界の直後あたりで、フルネラは世界樹の一族を滅ぼしている

 

今作で登場するネルドはこの世界樹の一族だ。彼はフルネラに滅ぼされかけた世界から妹と二人で異世界へと逃げ出し、そこで運命の出会いを遂げ、ルフラン市へと復讐のために舞い降りている

 

 

 

次に訪れた世界は深緑のフェーヌム

 

18頁 美味しい、驚いた。
こんな食べ物があるとは。
周りの人間は食べない。
灰汁が強くて無理だそうだ。
こんなに美味しいのに。
19頁 ああ、どこかの地に根を下ろすことがあれば“これ”をたくさん植えよう。
これは毎年実を付けるのだろうか?
そこは四季がめぐる土地だろうか?
そうであるなら、それはきっと幸せなことに違いない。
20頁 虫が煩い。
花に肉を与えて駆除しようと試みたが互いに闘おうとはしなかった。
まあ、そういうものか。
村の連中は愚かだが、素朴で気のいい連中だ。
少しの間、ここで暮らすのも悪く無いかもしれない。
21頁 ヤツが来た……。
ヤツは村に居座った。
どういうつもりだ?
ああ、世界が崩れる。
――だが、本来の目的を思い出した。
感謝すべきだ。
そして昨日地震が起きた。
もうここも……だ。
明朝ここを立つことに、なんの躊躇いもなくなっていた。

フェーヌムは話がかなりザックリとしているため、憶測が多い。先に断っておく

 

フェーヌムという世界は、フルネラにとって「安息の世界」だった

人間が住み、木々が生い茂り、果実はとても美味しくて、ゆったりとした時間の流れる普通の世界だ

今までずっと荒んだ異世界旅行をしてきた身であり、かつウンブラという紛争世界と世界樹の一族の滅亡旅行という二大イベントが前にある。そんなフルネラにとって、外敵と呼べる外敵もおらず、美味しい果実がなっていて、人間として十分な生活のできるフェーヌムの世界はきっと心安らげる世界だったのだろう

 

おそらくフルネラはかなり長い時間をこのフェーヌムで過ごしている

大切な黒ノ紙を訳の分からん雑魚に使ったり、大事な鍵の内一本をミノムシなんぞに託したりと、明らかに今までのフルネラの用意周到さからかけ離れた行動が多々見られる。おそらく北風と太陽理論みたいなもので、暖かなこの世界での生活は彼女の気を緩めたんじゃないかな、と思う

 

だがそんな生活も長くは続かない

大賢者がフルネラを追ってフェーヌムへと来た。ここはもうフルネラにとっての安息の地でも何でもない

 

本来の目的を思い出したフルネラは、途端に冷徹な顔を取り戻す。それなりに思い入れのあったこの世界を即座に飛び出すことに、何の疑問も抱かなくなっていた

 

 

 

フルネラは、地下帝国メルムへと訪れる

12頁 鳥人の王、抜け目のない男だ。
今は大丈夫だが油断はできない。
だが、所詮旧態依然とした王政だ。
いくらでも手はある。
13頁 王妃に目をつけられた。
愚かな女だ。
14頁 奴隷を与えた。
従順で力強く、無口な奴隷を
もっとも愚かでルールを守れぬ者に与えた。
結果は見えている。
15頁 準備は整った。
地震に見せかけ大天窓をふさいだ。
もうここは暗闇の世界。
不測の事態でも盟約が守れるのか見ものだ。
まあ、守れはしまい。
16頁 栄枯盛衰は世の習いというが
笑いがとまらない。
ああ、内なる破壊欲が満たされる。
こんな人間だったか?
影響されているのか?
だが、これほどの快楽はかつて感じたことがない。
17頁 “ここ”の神だそうだ。
だが、“ここ”にはもう用は無い。
触れぬ神にたたり無しだ。
黒ノ紙を使ってでも戦いは回避せねばならない。
――6枚あった黒ノ紙も半分を切ってしまった。

鳥人帝国繁栄の時代

フルネラはそんなメルムの世界へと到着する

プレイヤーたちが到着した頃には地下帝国と化していた鳥人帝国は、フルネラが来た時にはまだ健在だったのだ。しかし、フルネラはこれからその帝国をぶち壊す

 

再確認。フルネラの目的は『鍵の捜索』と『鍵の隠匿』だ

そのためにはフルネラは世界の主とも呼べる地位を欲している。その世界で自由に動き回れる地位を手にすれば、捜索も隠匿も好きなように出来るからだ

 

鳥人帝国には当たり前だが、帝王がいた

鳥人たちが治める国だ。新参者であるフルネラなど相手にされるわけがない。栄えた国家はフルネラにとって邪魔でしかなかった。いかに大魔女と呼べるほど力ある身であろうと、国を相手に戦ってまともで済むわけでもないし、全員を服従させることも容易ではないだろう

 

故に、フルネラは鳥人帝国を潰すことにした

気性が穏やかで、従順で無口で、しかし力はある生き物――――トローリアに目をつけ、それを鳥人帝国の中でも愚かな者へと献上した

 

そしてフルネラは、鳥人帝国の空に蓋をした

元は鳥人帝国は盆地かどこかに作られていたのだろう。崖があって、大空が広がっていて。山の腹をくりぬいたような場所にあったと思われる。その大空を大地震にみせかけてぶち壊し、鳥人たちが自由に飛び回れないようにした

 

そこからは妖路暦程に書いてある通りだ

空が封じられた世界は暗闇で、鳥人たちは唯一の長所であった翼を使えない環境となる

鳥人一同、一致団結して岩を掘り進み、崩落した天井を抜ければそれでよかったのだろう。しかし抑圧された環境にて、愚かな鳥人は自分のペットであるトローリアを痛めつけた

 

八つ当たりだ。ストレスがたまっていた

トローリアが穏やかで優しい生き物だということもあって、鳥人はトローリアに暴行を働き続けた。反撃なんてしてくるわけがないと、そう思って

 

トローリアはその扱いに耐えかねた。反乱が起きる

鳥人は空を飛べない。低い天井が蓋をしていた。トローリアは力が強かった。瞬く間にトローリアは鳥人たちを駆逐し、食事し、殲滅した

 

その光景を見て、フルネラは昏い愉悦を感じている

おそらくここが一つの分水陵。フルネラはトローリアに淘汰されていく鳥人たちを見て、愉しいと感じてしまった。悪性が前面に出るほどにフルネラは疲れ切ってしまっていたのだろう

 

トローリアの王に偽物の鍵を渡したフルネラはメルムを脱出

後はプレイヤーたちが訪れた世界となる

 

メルムの世界では「どうして鳥人帝国が滅びたのか」を調べるために人間の調査団が結成され、探索に

プレイヤーたちが訪れた時には既にトローリアは鳥人帝国を滅ぼし終え、狂暴化したトローリアが地下帝国で繁殖していた

調査団はトローリアに襲われ壊滅。唯一残っていたロシナも、調査とはまた別の野望を抱えていたりもしたが、最期はトローリアによって仲間と同じ末路を辿る羽目になってしまった

 

ところで、暦程の記述にここで初めて『黒ノ紙』というものが登場する

これはフルネラの奥の手のようなもので、妖路暦程のページの一種だ。絶大な力を持つこの紙は大体の物事は解決することができるらしいが、しかし枚数制限が存在しており、惜しむ描写があることから大魔女フルネラの力をもってしても補充の難しい『最後の切り札』であると推測できる

 

半分を切ったという記述と、本編での黒ノ紙保持モンスター(言わゆる裏ボス)から分かるように、使われた対象はこれまでで四体

 

死都アマデウスで『アシキモノの封印』

三領主の塔ウンブラで『大魔王フュルフュールの懐柔(半不老不死化)』
深緑のフェーヌムで『ペコロ』

地下帝国メルムで『大帝ジュノーン抑圧』

 

残りの二枚は、

 

アストルム王国で『D.E.マキーナ抑圧』

深碧のカンパニュラで『デボン抑圧』

 

に使用される

 

この紙の存在と、紙の使用用途から、大魔女フルネラの力量がなんとなく掴めてくる

フルネラは文字通り大魔女であり、あらゆることを可能とする強者ではあるが、それでも各世界での頂点や規格外とも呼べる存在相手には苦戦をするのだ。そんな彼女がオオガラス相手に絶望するのは仕方のないことだと言えよう

 

 

 

次はアストルム王国である

8頁 ここの支配者――
自然に生まれたとでも言うのか?
わからぬ……わからぬことだらけだ。
9頁 まったく、不可思議な世界だ。
まるで夢の中にでも迷い込んだような。
10頁 マロニエの実に知恵を与えた。
思わぬことが起きた。
与えた知識をもとに人間の真似事をする。
見ていて飽きない。
とても面白いやつらだ。
11頁 壁には決してたどり着けない、永遠に続くこの世界。
人間はどこかにいるのか?
わからぬ。
わからぬが問題は無い。
“ここ”ではないからだ。
だがそろそろ潮時だ。
手を打たねばならない。

アストルム王国にストーリーはない

唯一挙げるとするならば、プレイヤーたちがアストルム王国を訪れた際に出会った『コビト』は、フルネラの生み出した生き物であったということだ

 

元はマロニエの実という植物らしい

そこにフルネラが魔法で知恵を与えたところ、コビトとして振舞い始めたのだ。黒い肌のコビトという生き物かと思っていたらただの植物だったのは結構驚き

 

アストルム王国は見た目こそ興味のそそられる場所だったが、しかしフルネラにとって特筆すべきこともなかった。何より元から住んでいた生命体がいないので、鍵を探すだけ探して空振り、隠す場所としてコビトを生み出し、やることを終えたフルネラは次の世界へとすぐ旅立つ

 

ちなみにフルネラの黒ノ紙の用途である『D.E.マキーナ抑圧』とは、最初の記述にある支配者のことだ。名前の元ネタはデウス・エクス・マキナ。プレイヤーが戦う際には機械仕掛けの巨大な生き物が空間突き破って襲って来る

フルネラはこれを『この世界の支配者がこいつ?』『自然に生まれたのか?』等と疑問に思いつつ、強そうで面倒くさそうだったので黒ノ紙で対処したらしい

 

 

 

そしてフルネラは最期の異世界深碧のカンパニュラへと到達する

1頁 勝った。
それにしても、なんと心もとない世界だ。
これが餌だと、これを食うというのか?
2頁 死の匂いが強くなる。
ここは地獄か? それとも……。
だが、このままではじきに、確実に、死ぬ、死ぬ……。
3頁 死ぬ、死ぬ、死ぬ、死ぬ……。
なんたる油断、なんたる弱さ。
このままでは負ける。
4頁 左目が、爪が、足が……。
賢き者、小賢しい者!
立ちはだかる者!
5頁 恐ろしい。恐ろしい。恐ろしい。恐ろしい。恐ろしい。恐ろしい。
恐ろしい。恐ろしい。恐ろしい。恐ろしい。恐ろしい。恐ろしい。恐ろしい。
6頁 見つかった……。
やはり“ここ”まで追ってきた。
だが、ヤツも手負い。
旅の途中で拾った小娘が役にたった。
それに、手は打った。
これ以上は引けぬ。
7頁 出会いに偶然は無い。
それは人間も精霊も同じだ。
全ては最後の1手のための布石――だ。

この世界だけは読む順番が逆さだ。7ページ目→1ページ目という順番が正しい

 

フルネラは、この世界でまず妖精王と仲良くなる

フルネラ側が妖精王と仲良くなる理由は書いてあるように布石だ。そして妖精王側はフルネラの美貌を気に入ったらしい。俗な王もいたものである

 

そして、フルネラはここで大賢者と戦闘になる

いつまでも追いかけてくる大賢者を相手に、フルネラも嫌気が指していた。黒ノ紙ももう心もとない。何より、フルネラは旅の役目をほぼ終えている。最後の鍵の在り処が分かったのだ

故に、ここで戦うしかなかった。次に行くのは鍵のある世界だ。そんなところまでこの危険な大賢者という男を連れていくわけにはいかない

 

死闘となる

フルネラも策を弄すが、しかし大賢者も様々な手練手管を使う。その内の一つ、カンパニュラに棲む主『デボン』という大魚をフルネラへとけしかけ、成功。フルネラは左足をデボンに食われるも、これを最後の黒ノ紙を使うことによって退る

 

おそらく、フルネラは負けた

大賢者側も深手を負っただろうが、フルネラのほうが明らかに旗色が悪い。死ぬ一歩手前のところまでフルネラは追い込まれていたと思われる

 

が、ここでこの世界で打っておいた布石が生きる。妖精王の助太刀だ

フルネラは妖精王の庇護下に入り、あと一歩のところで大賢者はフルネラを仕留めきれず、撃退されてしまう

 

フルネラは助けられたことに薄い感謝を述べながら、しかしこのモンスターと妖精だけが住んでいるカンパニュラというダンジョンの暮らしを酷いものだと形容する。人の心がもうなくなってきている。感謝感激しててもおかしくないはずなのに

 

食事の貧しいここでは、フルネラは満足な休養を得ることは出来なかった

四肢に大けがを負い、魔力も枯渇した満身創痍のボロボロの状態で、フルネラは最後の世界『テネス』へと転移を行う

 

 

 

・テネス

 

この先は、本編をプレイして一目瞭然のことばかりである

 

フルネラはテネスに来てまず愕然とした。テネスはマナが薄すぎる世界だったからだ

いかに大魔女と言えど魔力の源であるマナがなければ話にならない。そして、フルネラは大賢者との戦いで体内のマナが枯渇していた。全回復の魔法すら使えないままに飛んだ世界では肝心の大気のマナが薄いと来た。絶望とも呼べる状態だった

 

しかしフルネラは、テネスで初めて出会ったバーバという人間に感謝する

バーバという人間には魔術の素養があった。フルネラは限界ギリギリの体を鞭打って、最期の魔法である『肉体移動の魔法』を行使する

フルネラはこの時、元の肉体を捨て、テネスに生きる楽座の主「バーバ・ヤーガ」という人間の肉体を手に入れることに成功する

 

しかしバーバとなったフルネラは、自分の置かれた状況が尚も悪いものだということを知る

この世界は本当にマナが薄い。全回復の魔法は愚か、異世界移動の魔法すら使えないほどにマナがなかったのだ

バーバの肉体は悪くはない。だが、良くもなかった。バーバの肉体では満足に魔法が使えない。このままではこの世界で鍵を手に入れることができても、隠した鍵を取りに行くことが出来ない。バーバは至急、問題を解決する必要があった

 

バーバは魔女学校を作った

テネスの世界で、魔術の素養のある奴隷を買い漁り、育てることにした。テネスの世界での手駒を増やすという面ともう一つ、自分の次の体を探すためだ

バーバの体となってしまっても、肉体移動の魔法は使うことが出来た。だからバーバは、バーバの肉体を捨てることにした。もっと魔術の才能に溢れた体に乗り移れば、以前のように異世界を飛び回ることだってできるからだ

 

そしてバーバは「イサラ」という魔女を見つける

イサラは大魔女フルネラから見ても素晴らしい才能だった。千年に一度生まれるかどうかといったほどの天才だ。そんな人材を、バーバは奴隷の中から発見する

しかし、問題があった。イサラは病弱だったのだ。生まれた時から不治の病を患っており、日中は常に立っていられないほどの高熱に侵され、魔力を使うたびに視力を失っていく。溢れんばかりの才能に、このテネスという世界が生み出した肉体が耐えられていなかった

 

バーバはイサラへの乗り移りを断念

その子供の肉体をいただくことにし、そのためにあらゆるものを総動員させていく。イサラが死ぬ前に地方領主と結婚させ子供を無理やり生ませたり。結婚相手に毒を盛って子供を自分の元へと呼びこんだり。子供を己の意のままに操るために、魔術を教えたり、大切なものをわざと作ったり

 

そして、バーバの目的は果たされる

 

肉体を乗り換え続けたバーバはイサラの子供を乗っ取るつもりでいたが、棺の間にて病に侵されていないイサラの体を入手することに成功する

鍵を回収しに行く手間も、暦程とドロニアが省いてくれた。バーバは三本の鍵を使って「自分がオオガラスになる」という願いを叶え、オオガラスが雛から成鳥になるために必要な栄養として用意していた「ルフラン市」を食べることで、今すぐにでも世界を滅ぼしにかかろうとする

 

ドロシアやルカ、妖路暦程の物語の舞台となっていたルフラン市は、バーバによって用意された餌だ

オオガラスは人の悪意や怨念、後悔、苦痛、怨嗟などを餌にして成長する。そのためにバーバはルフラン市という「罪人の檻」をわざわざこのテネスの世界に用意していた

 

ルフラン市は魔法がかけられた町だ。テネスの世界で死んだ人の内、オオガラスの餌にふさわしい悪人の魂がルフラン市では人間として生きていた。例えば

 

 

 

 

以下、少女祈祷中